保険医療機関指定申請は社会保険労務士/診療所開設届は行政書士

厚生局に提出する「保険医療機関指定申請」は社会保険労務士の業務です

結論:健康保険法を根拠法とする保険医療機関の指定申請は、社労士法第2条で定められた社会保険労務士の独占業務です。行政書士が保険医療機関指定申請を行うのは違法です。
もちろん、行政書士賠償責任保険の対象外です。(全行団にて確認済み)

保険医療機関指定申請の根拠法

医療機関が保険診療を行うためには、保険医療機関としての指定を受けなければなりません。保険医療機関の指定については、健康保険法に規定されています。

健康保険法第65条1項
保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令第3条

(保険医療機関又は保険薬局の指定)
第六十五条 第六十三条第三項第一号の指定は、政令で定めるところにより、病院若しくは診療所又は薬局の開設者の申請により行う。

健康保険法

(指定の申請)
第三条 法第六十五条第一項の規定により保険医療機関又は保険薬局の指定を受けようとする病院若しくは診療所又は薬局の開設者は、様式第一号による指定申請書に、次の各号に掲げる書類を添えて、これを指定に関する管轄地方厚生局長等に提出しなければならない。

保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令

社会保険労務士の独占業務である根拠

健康保険法を根拠法とした保険医療機関指定申請は、社会保険労務士法第2条別表に記載のとおり社会保険労務士の業務として定められています。

社会保険労務士法第2条1項及別表第一

(社会保険労務士の業務)
第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(中略)を作成すること。

社会保険労務士法

別表第一(第二条関係)
二十一 健康保険法

社会保険労務士法別表第一

賠償保険の取扱い

結論:保険医療機関指定申請については、行政書士賠償責任保険の対象外です。

行政書士の業務に関する保険として、行政書士賠償責任補償制度があります。

行政書士賠償責任補償制度を運営する株式会社全行団に確認したところ、「保険医療機関指定申請」は健康保険法及び社会保険労務士法を照らし合わせると社労士の独占業務であることから、行政書士賠償責任保険の対象外であるとの回答がございました。

行政書士が保険医療機関指定申請を行った場合の損害については、保険が適用されません。

社労士試験にも出題されている

社会保険労務士の資格を取得するための試験において、健康保険法の問題として保険医療機関の指定等について出題されています。

行政書士の資格試験に、保険医療機関の指定についての出題はありません。

診療所、病院など医療機関の各手続き

医療機関に関与する事業者は、製薬会社、医療機器メーカー、レセプト業者、医療コンサルタント、私ども士業など、さまざまです。

各種手続きについて、医療機関から委任を受けて書類の作成などが出来る資格者は下記のとおりです。
医療コンサル、製薬会社など無資格者が書類作成等を行う行為は、法令等に違反しています。

診療所開設許可、開設届行政書士
保険医療機関指定申請、施設基準の届出社会保険労務士
生活保護医療機関指定申請行政書士
被爆者一般指定医療機関行政書士
難病指定医療機関行政書士
自立支援指定医療機関行政書士
労災保険指定医療機関社会保険労務士
医療法人設立登記司法書士
労基署、ハローワーク、年金事務所の手続き社会保険労務士
税務署、市税事務所の手続き税理士

保健所は行政書士、厚生局は社労士と業務が分かれているところは、あまり望ましいとは思いません。同じ医療機関の手続きを行うのに、それぞれ別々の事務所が書類作成等を行うと、微妙なところに齟齬が生じるおそれもあり、また、医療機関も行政書士と社労士の両方と打ち合わせ等が必要になるなど、良い所はありません。

それ以前に、社会保険労務士が保険医療機関の指定申請を業として行っているか、と言えば、ほとんどの社労士が行政書士業務だと思っているはずです。

現状は、行政書士が保健所に診療所開設届を提出した流れで、厚生局に保険医療機関指定申請を提出するのが多いと思われますが、それでも社労士法で定められている以上、違法行為になってしまいます。

行政書士が保険医療機関指定申請を行い、何かあった場合も、もちろん行政書士賠償保険の対象外になるので、行政書士も依頼する側の医療機関も注意が必要です。

オフィス結いは、行政書士と社会保険労務士のWライセンスのため、どちらの手続きも対応可能です。